請求書を作るだけでは、請求業務はシステム化できない

請求システム

顧客、商品、契約、利用条件。請求金額が決まるまでには、思っていた以上に多くの情報が関わっていました。

「請求システムを入れれば、毎月の請求書作成はかなり楽になる。」私も、最初はそれくらいに考えていました。ところが実際にシステムの中身を見ると、請求書を作る前に決めなければならないことの方が、はるかに多かったのです。

顧客を登録して、商品を登録して、金額を入れる。そして請求書を発行する。最初は、そんな流れを想像していました。でも画面を追っていくと、「誰に請求するのか」「何を契約しているのか」「いつから利用しているのか」「どう金額を計算するのか」と、次々に情報が出てきます。そこで気になりました。そもそも私たちが普段「請求業務」と呼んでいる仕事は、本当に請求書を作ることなのでしょうか。

1. 請求書は、最後に出てくるものだった

毎月の請求業務で目につきやすいのは、やはり請求書です。Excelで金額を集計し、内容を確認して、請求書を発行する。だから請求システムを導入すると聞けば、「請求書作成を自動化できる」と考えるのは自然です。

しかし、請求書そのものにも複数の情報が集まっています。国税庁が示している適格請求書の記載事項だけでも、発行者情報、取引年月日、取引内容、税率ごとの金額、消費税額、請求先などが必要です。つまり、請求書は一つの数字を印刷した書類ではなく、複数の取引情報が集まった結果です。

2. 「誰に、何を、どんな条件で」がないと請求できない

請求を少し分解すると、必要な情報が見えてきます。まず「顧客」がいて、「商品」があります。ただし、それだけでは請求できません。その商品を、その顧客とどんな条件で契約したのかが必要になります。

つまり、顧客 → 商品 → 契約 → 請求という流れです。Excelで管理していると、この間にある情報を人が判断して補っているため、あまり意識しません。

3. 商品が同じでも、請求条件は同じとは限らない

たとえば同じ月額サービスでも、顧客によって契約条件が違うことがあります。通常料金の会社もあれば、一定期間だけ値引きする会社、初月だけ日割り計算する会社もあるかもしれません。

商品は同じでも、「何を売るか」と「どんな条件で売ったか」は別の情報です。この二つを分けて管理するからこそ、顧客ごとの請求条件を整理しやすくなります。

4. 月額10万円でも、いつ10万円を請求するのかは別の話

さらに、「月額10万円」と決まっていても、それだけで請求内容は決まりません。いつからいつまでの利用分なのか、いつ締めるのか、開始月は日割りなのか、固定料金なのか従量課金なのかでも変わります。

請求書上では一つの金額に見えても、その裏側では、期間 × 契約条件 × 計算ルールが動いています。デジタル庁が管理するデジタルインボイスの標準仕様でも、請求情報を構造化されたデータとして扱う考え方があります。紙をPDFにするだけではなく、請求に必要な情報そのものを整理する必要があるということです。

5. Excelでは、人が「足りない情報」を補っていた

Excelなら、「この会社は月末締め」「この顧客だけ値引き」「来月から単価変更」といった情報を担当者が覚えていることがあります。備考欄、契約書、メールを見ながら毎月判断しているケースもあります。

つまり、Excelだけですべて管理できていたのではなく、Excelに足りない情報を人が補っていたのです。システム化すると、その「頭の中にあるルール」もデータとして持たせる必要があります。

IPAもDXで業務プロセスを考える際に、「入力」「出力」「作業ルール」などを整理する考え方を示しています。請求業務も同じです。請求書という出力だけでなく、その前に何を入力し、どんなルールで処理しているかを見る必要があります。

6. システムを選ぶ前に、「今どう請求しているか」を見る

いきなりシステム比較を始めるより、まず一件の請求を逆にたどってみると分かりやすくなります。誰に請求しているのか、何の商品なのか、どんな契約条件なのか、利用期間はいつまでか、いつ締めるのか、どう金額を計算しているのか。

そして、その情報がExcelにあるのか、契約書にあるのか、営業担当者しか知らないのかを確認します。特に「人しか知らない情報」が見つかれば、そこはシステム化するときに整理が必要になる可能性が高い部分です。

7. 「請求書を作るシステム」から「請求条件を管理する仕組み」へ

請求システムを見る前と後で、一番変わったのはここでした。以前は、請求システムを「請求書を効率よく作るもの」と考えていました。でも実際には、その前にある顧客、商品、契約、利用条件、料金計算までがつながっています。

だから請求業務をシステム化するとは、請求書を自動作成することだけではありません。**請求金額が決まるまでの情報を、誰が見ても分かる形にしていくこと。**そこまで考えて初めて、「請求業務をシステム化する」という言葉の意味が見えてきました。

まとめ

「請求システムを入れれば、請求書作成が楽になる。」それ自体は間違いではありません。ただ、その請求書を自動で作るためには、その前にある情報が整理されている必要があります。

まず、自社の請求書を一枚だけ選んでみてください。その金額を、顧客、商品、契約条件、利用期間まで逆にたどれるでしょうか。途中に「担当者しか知らない」「毎月メールを確認しなければ分からない」という場所があれば、そこが見直しの入口です。

全部を一度に変える必要はありません。まず一件の請求について、「なぜこの金額になったのか」を見えるようにする。それだけでも、請求業務をシステム化する最初の一歩になると思います。

参考にした公式・参考情報

・国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm

・デジタル庁「JP PINT」
https://www.digital.go.jp/policies/electronic_invoice

・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進のための自社の未来の描き方~業務プロセス・業務主体・組織の未来の描き方編~」
https://dx.ipa.go.jp/dx-future-column2

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